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おそらのうえで。

おそらのうえで。

*宣誓布告*

君が泣いてた。


そんな恋の始まり。


*宣誓布告*




放課後の教室。

忘れ物を取りに戻った僕の目にうつったのは

窓にうつる君の涙。



ぼんやりグラウンドを見つめる君の頬を

ぼろぼろ零れおちる。



僕はそのまま動けなくて

声をかけることも出来なくて

ただそんな君の後ろ姿を

見つめてた。



「覗き見禁止」



先に声をあげたのは君だった。

君は涙を拭って笑った。



「ご・・・ごめん」


とっさに謝る僕に

笑う君。


「窓にばっちりうつってたよ。
 “やっかいなの見ちゃったなー”って顔」


真っ赤な目で君は笑う。


「そんなつもりじゃ・・・ないけど・・・
  ごめん。忘れ物取りに来ただけなんだ」


君の顔を見れなくて

僕は足早に自分のロッカーから

忘れてた辞書を手にとった。


「何も聞かないの?」


僕の後ろから君は問い掛ける。

でも僕はなかなか言葉が出なくって

振り返り

下手くそな笑顔を見せた。


「やさしいね。
 アイツとは大違い」


グラウンドを眺めながら

君は淋しそうに笑う。


君の視線の先には

君の大切な人。


「あいつだったら人の気持ちも考えないで
  ずけずけ聞いてくるんだよ、きっと」


君の声は震えてて

君は必死に涙を堪えてた。


聞かなくても

君が何も言わなくても

その涙が僕に教えてくれる。



そんな君に僕ができること。

考えるよりも先に

僕の足は君の方へと向かってた。



「洗濯、ちゃんとしてあるから」


僕の差し出したタオルに

君は少し驚いたけど


「鼻水ついてもしらないから」


そう言って笑うと

タオルに顔を埋めた。


なぜか僕は

そんな君をひとりに出来なくて

少し距離をおいて座った。

君の押し殺した鳴き声がやむまで

ただ僕はそこに座ってたんだ。




「コレ、洗って返すから」


空も赤くなってきた時

君は何か吹っ切るように立ち上がって

タオルをちらつかせた。


「いっぱい・・・ありがとね」


少し照れ臭そうに笑う君を見て

僕の中のモヤモヤしたものが

確信に変わる。



「あのさっっ」

教室を出て行く君を呼びとめて

僕は言ったんだ。


「きっとこれから俺
 どんどん君のこと好きになるから」


それは僕の君への

宣誓布告。


「覚悟、しといて」


一時で恋に落ちた僕の強がり。


僕は君に恋をした。

これから僕は君のこと

どんどん好きになっていく。


君は窓の外と同じくらい

真っ赤な顔の僕を見て

笑ってた。




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